ちぎれた世界にて
「なにを……あっ!」
なんと、殴られた高倉の姿が消えたのだ……。石井と女の子が驚いていた。
「気絶すれば元の世界に戻れるというわけだ。気絶することぐらい一人でもできるな?」
彼の後ろにいた3人は、コンクリート製の柱や天井に頭をぶつけて、すぐに気絶した。そして、姿を消した。
「じゃあ、頑張れよ!!!」
彼はそう言うと、拳銃の台尻で何度も自分の頭を殴り、気絶して消えた。
「俺はできるけど、君にはできるかな?」
食堂には石井と女の子が残され、
「私にもできるもん!!!」
女の子が自信満々にそう言ったので、石井は納得するしかなかった……。
「えい!!!」
石井は、思いっきりコンクリートの柱に頭をぶつけた。彼は、運良くその1発目で気絶することができ、姿を消した。
「えい! えい! えい!」
一人食堂に残された女の子は、柱に頭をぶつけ続けた。しかし、恐怖心から、弱々しくしか頭をぶつけられなかった……。
「ウワァァァァァン!!!」
どうしても気絶できないことと、一人薄暗い食堂に残されたことにより、女の子は泣き叫んだ……。
「ウウウッ」
彼女の泣き声を聞いた1階のロビーにいたゾンビたちが、食堂にやって来てしまった……。
「イヤァァァァァ!!!」
ゾンビを見た彼女は、必死に柱に頭をぶつけ続けた……。彼女は小便を漏らしていた……。
運良く彼女は、ゾンビとの距離が3メートルぐらいのときに、極度の恐怖心もあり、気絶することができた……。そして、彼女が姿を消すと、目標を失ったゾンビはまた散歩を始めた……。
「どうして、見届けてから気絶しなかったの!?」
元の世界のエレベーターの中で、高倉が石井に叫んだ。まるで宮武(死体が足元に転がっている)の霊が彼女に乗り移ったようだった……。彼女が怒っているのは、石井が女の子よりも先に気絶して、女の子を置いてきぼりにしたことだ……。高倉は、まだ目覚めない女の子を抱きかかえていた。同じく元の世界に戻った尾張たちが黙って見ている。
「キャーーー!!!」
そのとき、女の子が急に目を覚まし、彼女は大声をあげた……。突然の大声に、尾張たちも驚いていた。
「ああ、良かった!!!」
高倉は大喜びしていたが、女の子は目をパチパチしているだけだった……。極度の恐怖心が、彼女の精神をおかしくしてしまったのだ……。