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ちぎれた世界にて

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 子犬が喰われ始めたとき、尾張たちはエレベーターのところに着いた。幸いにもエレベーターは、ロビーの1階に止まったままだった上に、エレベーターの中に生存者やゾンビの先客はいなかった。
「早く来ないと、下に参るぞ!!!」
エレベーターに乗りこんだ尾張が、開ボタンを押したままゾンビを倒しながら叫ぶ。他の3人は、エレベーターの前で、自分たちや石井たち(以後、女の子も含む)に襲いかかってくるゾンビを倒してやっていた。
 石井は藤林の死体を背負いながら、エレベーターに向かっていた。その後ろを、女の子を抱き抱えている宮武と高倉が追う。
「ううう……」
エレベーターまでもうすぐというところで、藤林が目を覚ました。ただそれは、ゾンビとしての目覚めだった……。藤林は、目の前にある石井の首に噛みつこうとした……。

   パンッ!!!

 ゾンビ化した藤林に気づいた尾張が、藤林の頭に銃弾をお見舞いした……。石井の耳のすぐ横を銃弾が通ったため、石井は驚いて、藤林を床にドサッと落とした……。すぐに彼は、もう一度藤林を背負おうとしたが、
「馬鹿!!! もう死んでるんだ!!!」
尾張の叫びに、石井はふんぎりがついたようで、
「クソ!!! クソ!!! クソ!!!」
そう叫びながら、エレベーターに駆け込んだ。彼のすぐ後ろにいた宮武たちも駆け込む。その後、エレベーターの前にいた3人もエレベーターに乗りこんだ。
「ま…待ってくれ!!!」
そのとき、まだ生き残っていたスタッフがエレベーターに乗りこんできた。彼は、弾切れになった拳銃を持っていた。

   ブゥーーー!!!

 エレベーターが、定員オーバーだと告げた……。なにせ、小さいエレベーターだったからだ。ロビーにいたゾンビは、一斉にエレベーターに向かって行進を始めた……。ロビーには、もう生き残りがいないようだ……。

   パンッ!!!

 尾張が素早く、そのスタッフの足を撃った。そして、彼はスタッフをエレベーターの外へと押し出した。わずか2、3秒の出来事で、エレベーターの前で転がっているスタッフは、何が起きたかわからない様子だった……。
 しかし、エレベーターのドアが閉まったときになって彼は、自分がゾンビだらけのロビーに置き去りにされたことに気づいた……。エレベーターの呼び出しボタンを押そうにも、足を撃たれているので立ち上がることができない……。
 彼がそのまま、ゾンビに喰われたのは当然のことだった……。

 石井たちや尾張たちを乗せたエレベーターは、ゆっくりと下降していく。とんでもないことが次々に起きたので、尾張がスタッフを撃ったことなど、誰も気にしていなかった……。

 そのときだった……。とてつもない白い光が一瞬で、彼らを包みこんだ……。それは本当に一瞬の出来事で、次の瞬間には光が消えていた……。

作品名:ちぎれた世界にて 作家名:やまさん