ちぎれた世界にて
パッ!
叫んですぐに、電力供給が再開し、照明がついた。
「こ…これは!!!」
博士たちは、「救世主」たちの姿を見て、これ以上無いほど驚いていた……。
異次元からやって来たのはゾンビの集団だったのだ……。
ゾンビたちは、研究員などの生きた人間や生贄の死んだ人間を喰っていた。少なくとも、「救世主」ではないことは明白であった……。
「撃ちまくれ!!!」
スーツ男がそう叫ぶと、彼の兵士や研究所の警備員たちが一斉にゾンビに銃撃を浴びせた。しかし、ゾンビたちは構わずに、兵士や警備員を、また一人また一人と喰っていった……。
博士やスーツ男や栗林にも、ゾンビが襲いかかり始めた。近くにいた博士の助手が、護身用の拳銃を使って、ゾンビの心臓部分を撃った。しかし、撃たれたゾンビはひるむだけだった……。
「クソ!!!」
栗林は、映画の知識から、そのゾンビの頭を撃った。それは正しかったようで、そのゾンビは、床に倒れこんだまま動かなくなった。
「映画と同じだ!!! 頭を狙い撃て!!!」
栗林がそう叫ぶと、兵士や警備員はその通りにした。ありがたいことに、「走らない」ゾンビだったこともあり、ゾンビの数はどんどん減っていった。
だが、ゾンビに襲われた研究員などや喰われた死体が次々にゾンビ化したり、開いたままのゲートから新たなゾンビが次々にやって来たため、キリが無い上に、ゾンビのこの人海戦術にいつまでも耐えきることは無理だった。
「後は頼んだぞ!!!」
スーツ男は博士たちにそう叫ぶと、護衛の兵士たちを連れて、大部屋から逃げ出した……。しかも、その際、ドアを開けっ放しにしていったため、ゾンビが大部屋の外へと出ていきだしてしまった……。
「あの馬鹿役人め!!!」
栗林はそう叫びながら、次々に襲いかかってくるゾンビを倒していた。
「おい!!! 非常停止ボタンを押して、穴を閉めろ!!!」
博士は、異次元との穴を作る機械を操作しているはずの研究員に叫んだが、その研究員は操作コンソールのそばで、ゾンビたちに喰い散らかされている最中だった……。
「栗林!!! 機械を操作して、あの穴を閉めるから護衛してくれ!!!」
「わかりました!!!」
「私も手伝います!!!」
博士は、栗林と博士の助手の護衛の元、機械の操作コンソールへと向かうことにした。次々と「来日」してくるゾンビたちが通っている、異次元との穴を閉めるためだ。
栗林は博士の前を走りながら、行く手を阻むゾンビを次々に倒していった。一見すると、彼らは順調に進んでいるように見えるが、足元に転がっている死体はゾンビなのではないかと、彼らは怖がりながら進んでいる……。そして、なんとか操作コンソールのところまで着くと、博士は大急ぎで非常停止ボタンを押した。
すると、穴は静かに閉まり、ちょうど入りかけの状態だったゾンビは、身体の前半分の部分だけ「来日」することになった……。