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ちぎれた世界にて

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第3章 開門



 島に到着した石井たちは、岩山に囲まれた研究所を目にすることになった。コンクリートの打ちっ放し式のその2階建ての建物は、周りの岩山に溶け込んでいるようだ……。それにとても観光に適した島ではなかった……。
「まるで秘密基地だな!」
藤林の言うとおりだったが、最先端科学の見学が旅行の目的なのだから文句は言えなかった……。ただ、石井たち旅行者全員が、早く帰りたいと思い始めていた……。
「さあさあ、どうぞ研究所へ!!!」
それを察したのか、栗林たちスタッフが、研究所への誘導を始めた。研究所の右手にはヘリパッドがあり、一機のヘリがあった。
 旅行者たちの足取りは重かったが、台風による雨と強風がやって来ると、一斉に研究所へと走り出した。これ以上濡れるのはゴメンだからだ……。


 研究所のロビーで、栗林がさっそく見学を開始すると言う。トイレ休憩は無かったが、船で済ませておくようにという案内があったので、みんな大丈夫そうに見えたが、
「すみません。なんかオレたち、悪い物を食べちゃったらしくて、トイレに行かせてください」
例のあのグループのリーダー格の男(乗船のとき、石井たちに早く進めと言った奴)がそう言った。すると、
「すみません。俺たちも行かせてください」
石井もそう言った。藤林と宮武と高倉はそこで、自分たちがトイレを済ませておくことを忘れていたことに気づいた……。高倉は恥ずかしそうにしていた……。
「私も!!!」
子犬を抱えた女の子もそう言った。どうやら、彼女もちゃんとトイレを済ませておかなかったようだ。
{トイレは船で済ませておくって知っていただろうが!!! まあ、9人ぐらいいなくてもいいか}
栗林は心の中でそう思った……。そして、仕方がないという口調で、
「じゃあ、後から追いかけてきてくださいね」
栗林がそう言うと、例のあのグループと石井たちのグループと子犬を連れた女の子は、トイレ(小さなトイレマークの案内があった)へと歩いていった。
 栗林は、その他の旅行者の見学を開始した(女の子の両親は、女の子が後から来ることに同意してくれた)。ただ彼は、見学に出発する際、近くにいたスタッフ2人に、アイコンタクトで指示を与えていた……。2人のスタッフは、その指示の内容がわかったようだ……。



 あの地下の広い空間の大部屋で、博士たちは旅行者を出迎えた。博士は、見学者へのサービス精神など知らず、旅行者たちを生贄としてみていなかった……。なので、自己紹介などせずに、案内を栗林に任せ、大部屋の隅で、実験を静かに見守ることにした。
「では、あちらの機械の下にお集まりください!」
栗林の正体は、この研究所の警備主任なのだが、観光ガイドに転職したほうが良さそうな口調だった……。

 旅行者たちは、栗林の指示通りに、ある機械の下に集まった。言うまでもなく、ある機械とは、2ページ目でバチバチと音を立てていた謎の機械のことだった……。そして、旅行者たちの足元には、魔法円があった……。
 スーツ男と栗林が博士の左右に立ったとき、博士は、機械を操作している研究員に実験を始めるよう合図した……。機械を操作している研究員は、おそるおそる機械を始動させた……。

作品名:ちぎれた世界にて 作家名:やまさん