夢の続き
「それはそれは遠い所、御苦労様です」
高見沢はこんな合いの手しか打てない。しかし、男は人懐っこく続ける。
「なあ一郎、思い出してくれよ。中学時代、おまえは雑誌を読んで知ったんだろ、地球と酷似してる星があることを。そして俺の夢と一緒で、おまえはいつかそのC星に行ってみたいと思ったんだぜ」
高見沢はここまでの説明を受けて、やっと記憶が蘇ってきた。そう言えば少年時代、宇宙に興味があった。そしてある日、衝撃の知識を得た。それは獅子座に太陽に似た恒星があり、そこで公転する一つの惑星がまったく地球と同じであると。
さらに宇宙マガジンは特集を組んだ。そのC星には地球と同じ町があり、そして同じ自分がいる。そんな論述が理論整然となされてあったのだ。
当時高見沢はまだ純粋無垢な少年だった。それを頭から信じ、いつの日かそんなC星を訪ね、もう一人の自分に会ってみたい、そんな途方もない夢を抱いてしまった。だが、そんな夢も歳月の流れの中で、忘却の彼方へと消え失せてしまった。