夢の続き
ドッキン!
心臓が止まるかと思うほど驚いた。そして早まった脈拍が静まる前に、さらに度肝を抜かれる。
その目の前に突っ立ってるヤツ、それは高見沢自身ではないか。こういうのを、ひょっとすると世間で言う幽体離脱、その現象なのだろうか? そんなことが一瞬脳裏を過ぎる。
しかし、高見沢はパジャマを着ているし、そして男は朝っぱらからバシッと背広で決めている。高見沢は狐につままれてしまった。
だが、これですっかり目が覚めた。そして、サラリーマンを生業(なりわい)としているせいなのか、こんな場面にあっても、ついついいつものヨイショした口調で話してしまう。
「えっとえっと、どちらのお会社さんの社長さまでしたっけ? お名前を頂けませんか」
まずは思い切り持ち上げて、男に丁重に伺(うかが)った。すると男は実に馴れ馴れしく返してくる。
「俺だよ、俺! C星の……おまえだよ」
高見沢は何のことかさっぱりわからない。
「ほう、私ですか。ところで一つ教えてください、C星株式会社って……、何県の?」
こんな質問を受けた男は口をポカーンと開けたままに。まことに呆れ顔だ。そして暫(しば)しの時の流れの後に、男は一つ大きなため息を吐いた。それから高見沢の記憶を蘇らせようとゆっくり語り始める。
「一郎、おまえは忘れてしまったのか? C星は二〇光年先にある獅子座の星だよ。C星と地球は鏡に映り合ったと言える星同士、我々の星の裏返しが地球だよ。つまり何もかもが同じなんだよ。今回、やっと時空トンネルがホームセンターで売り出されて、いの一番に、地球の俺に会いに来てやったんだぜ」