夢の続き
『夢の続き』
微(かす)かな秋風を熱い肌にヒヤリと感じる。そんな炎節も終わる頃、未明に夏嵐(なつあらし)が吹き荒れた。
バリバリバリ……ドカーン!
薄暗い部屋に霹靂(かみとき)の閃光が走り、同時に天鼓(てんく)が轟き渡る。きっと近くで落雷したのだろう。それでも高見沢一郎は枕を高くして眠ってる。多分妙な自信があったのだろう。高層マンションの谷間にある単身赴任者向けの安アパート、それらに守られて、決して雷は落ちないと。
そして明日は、いや今日は久々の休日だ。とことん朝寝をしたい。ゴロンと寝返りを打って、さらにぐっすりと寝込んでしまった。
嵐は通り過ぎ、それからどれくらいの時間が経過しただろうか、夜来の雨は上がり、カーテンの隙間から夏の日差しが眩しく差し込んでくる。
「よく寝たなあ、うーん」
高見沢はベッド上で大きく伸びをした。しかし、もう一寝入(ひとねい)りしたいと新たな睡魔に襲われる。だがここは朝のコーヒーが恋しくなり、重い瞼を開けた。
視野がぼんやりとぼやけている。だが不思議なことに、その視界の中に立っていたのだ、一人の男が。