ハリーの憂鬱
「・・・ありがとうございます・・・どうですか?その後は・・・」
「はい。頑張っています。今日も、今からおサンポに出ようとしていたら、こんな事になっちゃって・・・。」
「ご家族には、慣れましたか?」
「はい。随分と馴染んでくれています。息子も触れるようになりましたし、吠えたりもしません。とても、いい子です。」
「そうですか・・・じゃあ、もう一息ですね。頑張ってください」
「はい!頑張ります!」
僕がハリーに首輪を着けると、奥様がリードを繋いだ。
良く見れば、奥様は長靴を穿いている。
首にはタオル。
サンポ、やる気満々。
今日のは、全くの事故。
ハリーは、しっかり柳瀬家の家族として受け入れられていた。
僕の仕事は終わった。
僕は車に乗り込むと、エンジンを掛けた。
軒下からハリーと奥様が見送ってくれた。
ギアを入れると、車の窓越しに挨拶をした。
「じゃあ、ハリーを宜しくお願いします!」
「はい!・・・頑張ります!」
「ハリー・・・元気でな!」
ハリーは、名前を呼ばれてシッポを振った。
僕は、アクセルペダルをゆっくりと踏んだ。