ハリーの憂鬱
僕は車に乗り込んだ。
会釈をして、深呼吸した。
ギアを入れる。
ハリーの刺すような視線に気づいた。
ハリーは暴れる事も無く、奥さんの横でオスワリしていた。
ギアを戻す。
僕は、もう一度深呼吸をすると、ギアを入れなおした。
そして、アクセルペダルを、ゆっくりと踏み込んだ。
「サヨナラ、ハリー・・・幸せになれよ」
バックミラーをチラリと見た。
玄関の灯りに照らされ、ファミリーとハリーの姿が映っていた。
だが、ハンドルを右に切ると、その姿はミラーから消えた。
それから三日後。
奥様から、SOSの電話が鳴った。