ハリーの憂鬱
「遠いところをすみません。家までは直ぐです。後を着いて来ていただけますか?」
「はい」
僕はワゴン車の後を追った。
古い住宅街。
狭い道を右へ・・・左へと曲がっていく。
たしかに、迎えに来てもらって正解だった。
ワゴン車が止まった。
広めの庭に大型の犬小屋がある。
奥様が笑顔で玄関から出てきた。
その後ろには翔太君。
「梅雨川さん・・・本当に、すみません・・・お仕事中にこんな所まで来ていただいて・・・ありがとうございます」
「大丈夫ですよ」
「あれは、ハリーの家ですか?」
「はい・・・この庭で飼おうかと・・・」
「広いから喜ぶでしょう」
僕はフェンスの高さが気になった。
スライドさせて開くフェンスの高さは1.3メートルだろう。
壁のようなものであれば、簡単に飛び越える高さだ。
足が着けないフェンスだから、大丈夫だとは思うが・・・。
「柳瀬さん・・・暫くは繋いだままにして下さい。紐を長めにすれば大丈夫ですから」
「やはり・・・越えますか?」