ハリーの憂鬱
都市高速のカーヴをゆっくりと回っていくと、ハリーが、僕の左太腿に顎を載せてきた。
上目遣いで僕を見ている。
僕は、右手でハンドルを操作しながら、左の掌でハリーを撫でた。
ハリーは、更に、顎を押し付けてきた。
きっと、怒られると思って遠慮していたのだろう。
撫でられると、シッポを振り出した。
僕は、少しだけ後悔していた。
もっと、優しくしてやれば良かった。
ハリーの為にと・・・自分の気持ちを抑えてきた。
ハリーが一番したかった事。
それは、愛を伝える事。
それを知っていながら、敢えてスキンシップを抑えてきた。
ハリーは、ずっと、こうしたかったのだと思った。
僕は、それまで我慢してきたものが、心の中に溢れ出し、胸が詰まった。
太腿に顎を載せ、ジッとしているハリーの頭を、そして、背中をずっと撫でた。
ハリーは、うっとりした面持ちで僕を見上げていた。
時々、シッポが右から左へ・・・そして右下と場所を変えた。
都市高速を下りると、国道を山手に向かう。
大きな交差点を右折すると、篠栗駅が見えてきた。
路肩にワゴン車が止まっている。ワゴン車の横に、ご主人が立っていた。
僕はワゴン車の後ろにつけると、車から降りた。
雨は既に上がっている。
ご主人が、昼間と同じ笑顔で待っていた。