ハリーの憂鬱
翌朝、リビングで吠えるチビ達の声に起された。
未だ覚醒しきっていない脳みそが、昨夜の事をぼんやりと思い起こしている。二匹の捨て犬。
チビ達が吠えていると言う事は、昨夜、暗闇の中へ消え去った二匹が、デッキに戻ってきたのだろう。
僕はそういう図式を組み立てた。
僕はベッドから降りると、欠伸をしながらリビングに向かった。
チビ達は一斉に僕に向かって突進してくる。
突進してくる順番が決まっているのが面白い。
ラム、ルイス、エンゼル、ジュニア、そして、ジョディ・・・この着順は不思議に何時も同じで、今も変わらない。
朝の儀式が始まる。
僕は腰を落とすと、一匹ずつ、背中や頭を撫でる。
一番の甘えん坊は、末っ子のラム。
ラムはこの事件が起きる一月前に、十日程行方不明になり、奇跡の生還を遂げたばかりだ。そのせいもあってか、甘え方が尋常ではない。
それを見た他の子たちも、最近は、いつも以上にスキンシップを求めてくる。僕の体は瞬く間に犬臭くなり、彼らと同化する。
チビ達の興奮が沈静化すると、僕は立ち上がり、デッキ口のドアに寄りかかりながら、外の様子を窺った。
いたいた・・・黒・・・ボーダー・・・黒・・・えっ!?
一・・・二・・・・三・・・えっ!?
ボーダーは特徴があるから直ぐに判った。
しかし、同じ黒い犬が二匹いるではないか・・?
僕の脳みそはフル回転した。
良く見ると、昨日の黒と似てはいるが、白い部分が混ざっている「黒」がもう一匹増えていたのだ。