ハリーの憂鬱
「焦らず、じっくり向かい合って頂けますか?必要であれば、僕もお手伝いします。何でも言ってくださいね」
「はい。ありがとうございます・・・ハリー君・・・一緒に、頑張ろうね。」
・ ・・一緒に頑張ろうね・・・僕は、この言葉を信じたのかもしれない。
この家族なら・・・この、優しくて、しっかりした奥様なら、ハリーと一緒に歩いてくれそうな気がした。
「お願いします」
僕は頭を下げた。
「こちらこそ、ありがとうございます。あの・・・早速なんですが」
「はい・・・何か?」
「本当は、このまま連れて帰りたいのですけど・・・わがまま言って申し訳ないのですが、連れて来て頂けませんか?・・・ハリー君の事を考えたら、そっちが、良いかなって・・・このまま、車に乗せちゃったら不安だろうし・・・お願いできませんか?」
「構いませんよ。夜になりますが、良いですか?」
「はい。私達は、このまま家に戻って、準備して待っています」
「判りました、では・・・八時には、行けると思います。」
「ありがとうございます!」
家族は一斉に頭を下げた。
ご主人は一言も口を聞かなかったが、終始、優しい笑顔を絶やさなかった。一度は吠えられた翔太君も、喜びを堪えきれない様子だった。
僕は、住所と簡単な地図。そして、ご主人の携帯番号を書いてもらった。僕が篠栗に不慣れな為、ご主人とJR篠栗駅前で待ち合わせる事にして帰っていただいた。
柳瀬ファミリー、満点。
ハリー君・・・一緒に、頑張ろうね。