ハリーの憂鬱
僕は、ハリーの横に立つと腰を屈めてハリーの首筋を撫でた。
ハリーの様子を見る。
家族とハリーの距離、三メートル。
最初に動いたのは奥様。
二歩近づいて、距離二メートル。
腰を屈めた。
「ハリー君・・・こんにちは・・・」
ハリー・・・動かず。
「ハリー君・・・こんにちは・・・仲良くしてくれる?」
ハリー・・・目をそらす。
「ハリー君・・・」
ハリーは、何度呼ばれても目を合わせようとはしない。
そっぽを向いたまましっぽも下がったまま。
「翔太も呼んでみて・・・」
翔太君が、急に近づいた。
ハリーが翔太君に向かって・・・吠えた。
翔太君は驚いて硬直・・・一歩下がる。
「翔太が急に動いたから、ハリー君がビックリしたのよ・・・ゴメンね、ハリー君」
奥様が腰を屈めたまま二歩前進。
その距離、一メートル。