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つゆかわはじめ
つゆかわはじめ
novelistID. 29805
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ハリーの憂鬱

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厳しい冬も、永遠には続かない。
ハリーは頑張って、辛い冬を乗り切った。
工具箱の上で丸くなり、震えながら朝を待つ日は終わったのだ。
日ごとに早くなる夜明けは、東の山の稜線からハリーを照らし、そして、優しく包み込んでくれた。
時折、朝陽に目を細めながら、日なたぼっこをするハリーの姿を見かけた。
そんな日は、僕も、なんだか幸せを感じた。

裏山の深い緑は、日に日に鮮やかさを増し、大きく膨らんでいた桜の蕾が綻び始めた。
冬の間、存在すら判らなかった桜の巨木が、その所在を、一斉に誇示しだしたす。
仰ぎ見る春緑の中に、淡い桜色の塊が、ブロッコリーのように現れだした。
裏の天神池の畔にも、桜が咲き誇り、小さなハート形の花びらが、はらはらと風に舞った。
生命の息吹を感じる季節に、ハリーの未来へ、吉兆を願わずにはいられなかった。

だが、ハリーは、相変わらず工具箱の上で、散歩の順番を待っている。
チビ達は、ハリーの存在を認めてはいるようだが、やはり一定の距離が必要だった。
それ以上の接近を、ジュニアとルイスが許しそうにない。
上手に付き合うための、最低の距離、というものが壁を作っていた。
いや、その壁を作ることで、上手に付き合っているのだろう。
不必要な争いはしない。
彼達の中では、そんなルールが出来上がっていたようだった。

作品名:ハリーの憂鬱 作家名:つゆかわはじめ