ハリーの憂鬱
福岡は、冬の積雪は少ないものの、年に数回、大雪に見舞われる。
年が明けて一月の下旬に大雪が降った。
夕刻から振り出した雪は、その勢いは衰える事が無く、辺りをを無彩色の世界に変えていった。
夜中、僕は、チビ達を連れて散歩に出た。
車も滅多に通らないため、正しく白銀の世界が出来上がっていた。
チビ達の足跡が点々と付いていく。
真夜中の白い世界は、不思議なほどに明るかった。
ハリーのリードも外してあった。
ハリーは一定の距離を置いて一緒に散歩した。
山の麓で折り返す。
すると、ハリーも背中を見せて、真っ白な道路に小さな足跡を残していく。
足跡は生きている証・・・とでも訴えるように、大地にしっかりと残されていた。
時々、振り返って僕を確認すると、また前を向いて足早に家へと向かった。
こんな生活が何時まで続くのだろう。
僕は、チビ達に引かれながら、真っ黒な空を見上げた。
疎らだった綿雪は密度を上げ、一帯の景色を神秘的なものに変えていた。
いったい、何時までつづくのだろう・・・。
突然、アオサギが、怪鳥の様に「ギャーーッ」と啼いた。
チビ達は、慣れていて反応すらしない。
南竹が生い茂るカーブを曲がると、オレンジ色の灯りが灯る我が家が見えてきた。
玄関先には、先に戻ったハリーがオスワリをして待っていた。