小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
つゆかわはじめ
つゆかわはじめ
novelistID. 29805
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

ハリーの憂鬱

INDEX|41ページ/70ページ|

次のページ前のページ
 

僕は、グラスに氷を放り込み、スプーン一杯の砂糖を載せ、ラム酒を注いだ。砂糖が溶け出し、グラスの中でゆっくりと渦を巻いた。

この世に生を受けた時から幸せが約束された子と、ハリーのように翻弄されながら生きていく子がいる。
命があるだけ幸せなのか・・・ハリーを保健所から引き取る時に見た光景。
僕は眩暈を覚え、吐き気がした。
どの犬の目も、必死で僕を追っていた。
ほんの数秒の間に、彼達の不安や悲痛な叫びが伝わったのかもしれない。
いや、犬好きゆえの自己暗示だったのかもしれないし、僕の境遇から来る同情だったのかもしれない。

捨て犬は放って置けない。捨て子だった自分の境遇と、どうしても重ね合わせてしまう。

人も犬も、命の尊さは同じはずだ。そんな事を想いながら、グラスを傾けるうちに、最終的には僕が飼うしかないのかな・・・と感じていた。

チビ達との相性さえ合えば、隔離する必要など無いのに・・・と思いながら、冬の嵐を凌いだ。

チビ達は、ソファの上で丸くなって眠っている。
僕は、時々、ハリーの様子を確認するためにバスルームを覗いた。

僕が顔を出せば、ハリーは飛び起きて甘えてくる。
僕を主人と思っているのかどうかは判らない。
ハリーの心の傷は簡単には消えるものではないだろう。ハリーの媚の売り方が、未だに悲痛な叫びに聞こえた。胸をキリキリと刺されるような気持ちになった。
作品名:ハリーの憂鬱 作家名:つゆかわはじめ