ハリーの憂鬱
僕は背後の二匹が気になりながらも、デッキの階段を上がった。
ドアにキーを挿し込む。
既に家の中では五匹のビーグルが、僕のハグを求めて地団駄を踏んでいる。
鍵を回し、体が入る分だけの隙間を開けると、家の中に飛び込んだ。
五匹の愛犬は外の事は気にする事も無く、矢継ぎ早に僕のハグを求めてきた。
一通りの儀式が終わると、急いでご飯の準備をした。勿論、外の二匹が先だ。
缶に入ったペースト状のフードとドライフードを多めに混ぜると、それを二つに分けて皿に盛った。
僕は、二つの皿を抱くようにして、デッキのドアを少しだけ開ける。
愛犬たちが異変に気づいた。我先に出ようとする。僕は自慢の長い足で愛犬たちを牽制しながら、ドアノブをさらに押した。隙間をすり抜けるようにして外へ出た。
外へ出て、僕は落胆した。既に二匹の姿は無かった。
僕はドッグフードが入った皿を抱いたまま、力なく、夜空を見上げた。
何で待っててくれない・・・そう心で呟いた。満天の星は相変わらずキラキラと瞬いている。ふと、先の草むらに気配を感じた。
いた!
二匹は草むらから僕の様子を窺っていたのだ。家の中にいる五匹に気づいて警戒しての行動だったのだろう。
僕は慌てて、皿を庭先に置くと逃げるように家に戻った。
僕はキッチンに急ぐと、タップリの水を大皿に入れて、再び外へ出た。
勿論、細心の注意を払いながら。