ハリーの憂鬱
「捨て犬・・・だな」
僕はこみ上げる怒りを押さえ込み、ボーダーに声をかけた。
「一緒に来るか?ご飯をあげるよ」
僕はボーダーを抱きかかえて車に乗せようとした。乗せようとして直ぐに下ろした。
黒がいる。ボーダーは保護できても黒が警戒して近づかない。
僕は暫し思案して、車のエンジンを切った。家までは五百メートルもない。
僕はゆっくりと歩き出した。ボーダーが着いてくる。そして、ボーダーから十メートル離れて黒も着いて来た。
僕は時折、足を止めて振り向いた。振り向けば黒が背中を向けた。
僕は後ろが気になりながらも、振り向かずに家へ辿りついた。そこでようやく振り向いた。僕の真後ろにはボーダー。十メートル離れて黒が佇んでいた。
僕は家に向かって歩きながら段取りを考えていた。
先ずは食べ物と水。上手くいけば二匹を保護できるかもしれないと思った。