ハリーの憂鬱
「ええ・・・家の中にいますね。ビーグルですよね」
「手一杯なんですよ。でも、三匹を放っておけますか?止むに止まれず保護したのです。餌代だって、薬代だってかかります。僕は被害者なんですよ。その僕に、飼い主としての責務を押し付けて、しかも6,000円払えって言うのですか?決まりって何ですか?おかしくありませんか?」
「あ・・・いや・・・そう言われても・・・困ったな」
僕は、つい意地悪が言いたくなった。
「そうだ、彼方が引き取って下さいよ。僕はもう疲れました・・・お願いします」
「あ、いや!・・・それは無理です・・・犬は飼えません」
そういうやり取りをしていると、四〇代前半だろう、職員が立ち上がった。
笑顔で近づいてきた。
「梅雨川さん・・・引取り料の6,000円はいりません。誓約書の項目も一つだけ残して削除しますから、サインだけ頂けませんか?」
「一つだけ?」
「ええ・・・外で飼う場合は紐で繋ぐ・・・そこだけ残して後は削除しますから。梅雨川さんの善意も在り難いと思っています。でも、我々も決まりの中でやっているもので・・・駄目でしょうか?」
「それが妥協案なら良いですよ。サインもするしハンコも押します」
「そうですか!・・・ありがとうございます。大変でしょうが、お願いします」
僕は何に腹を立てていたのか判らなくなった。
僕は動物達が隔離されている所に案内された。
大きなステンレス製のドア。
職員がそのドアを開けた。