ハリーの憂鬱
ハリーが、首輪を抜く方法をマスターしてしまった。
だからと言って、首輪をぎゅうぎゅうに詰めるのは可愛そうだ。指が二本入る程度が原則だし、それより少しだけ、きつめに留めても無駄だった。
何時、どうやって首輪を抜いているのかは判らないが、夜、帰宅すると、車を発見するや否や、ピョンピョン跳ねながら、出迎えるようになった。
その姿を見るのは嬉しくもあったが、通報されたら保健所が来る恐れがある。やはり、繋ぎ止めておかなければならないだろう。
そうだ!ハーネスなら抜ける事は無いだろう。明日にでも、ホームセンターに行って買ってこよう。
首輪を付け直し、リードに繋ぐ。
ハリーは工具箱の上に飛び乗り、ご満悦。首輪を外す気配も無い。
僕が仕事に出たら、自由が欲しくて強引に外しているのだろう。
困ったヤツだ。
翌日、僕は何時も通りに帰宅した。
ハーネスは昼間にホームセンターに行き、買い求めていた。
様子がおかしい。
ハリアーのお出迎えがないのだ。
今日は首輪が抜けなかったかな?上手くいかない日もあるだろう。僕は車を家の前に止めるとデッキに上がった。
リードが伸びている。
そのリードの先には、主を無くした青い首輪が輪になっていた。
僕はそれを見た瞬間に「保健所」の文字が脳裏に点滅した。
理由は無い。直感だ。あのハリアーが居なくなるはずが無い。