ハリーの憂鬱
どうやら、外れてしまったようだ。僕はスピードをスローダウンさせて、家の前に駐車した。
車から降りると、ハリーがシッポを振り、前足を上げて、喜びを体全体で表現する。
僕は、それを制してデッキに上がった。首輪がリードに繋がったまま、輪になっていた。
緩すぎたのだろう。僕は首輪の穴を、一つずらしてハリーに着け直した。
その間、ハリーは僕の顔を狂った様に舐めようとするが、僕はそれを制した。いずれ、里子に出す子だ。必要以上のスキンシップは避けた方が良いと思ったからだ。
ハリーが僕に心を開いた日。
しっかり抱きしめたあの日依頼、僕はハリーを抱きしめた事も無い。
オスワリが出来れば頭や首筋を撫でる・・・その程度に留めた。
ハリーは食べ物に執着した。
腹を空かせて彷徨った日々が、ハリーをそうさせたのだろう。
この、性格は変わらないかもしれない。
家の中に入った僕は、いつもの儀式を終えると、食事の準備をした。
皿は六枚。時々、肉と野菜を混ぜて作る。
チビ達の皿を並べる。チビ達は行儀良く食べだした。僕は、皿を抱えてデッキに出た。ハリーは足踏みしながら待ち構えていた。
マテ・・・ヨシ・・・小さな掘削機が、皿を綺麗にしていく。
僕はふと・・・ある事を思いついた。
家の中に戻ると、ササミジャーキーを二枚持って出た。
その時には、ハリーの皿は洗い立てのように綺麗になっていた。
ハリーは、僕の手の中のササミジャーキーに気づくと、足踏みしながらオスワリをした。
ササミジャーキーを放る。