ハリーの憂鬱
第4章 ハリーの憂鬱
夏が過ぎ、残暑も終わり、爽やかな秋晴れが続いていた。
デッキでぽつんと佇むハリー。
三匹だった捨て犬。
ただ一匹だけ残ったハリー。
チビ達・・・ジュニアとルイスとの折り合いが着かず、今、尚デッキの軒下にある工具箱の上が棲家となっている。
僕は、少しでも自由が効く様に、リードに工夫を施し、ハリーの行動範囲は五メートル四方を確保した。
何とか、寒くなる前に里親を捜してあげたい。僕はA4サイズのプロファイルを、何時も持ち歩き、出会いを求めた。
問い合わせの電話が二件ほどあったが、希望はメスで大人しい子。
彼方此方で公開しているプロファイルには、ちゃんとオスと明記しているにも関わらず、オスですか?メスですか?と聞かれた。
僕は全てのプロファイルを書き直す決心をした。
◎ 七月初旬××付近にて保護。◎推定一才。◎オス◎体の色:黒と白
◎ 性格:虐待を受けたようで、心に傷を持っています。心許せば至って従順。忠犬になります。連絡先:××××
僕は、里親を限定した方が良いと思い、性格の欄に敢えて、こう書き込んだ。ピンポイントの里親捜しに切り替えた。
世の中にはそういう子を、敢えて求める人がいるかも知れない。
それでも駄目なら、自分が・・・いや、未だそこまでは考えないでおこう。
希望を捨てずに、地道に里親を捜そう。それしかない。
そんな苦労もつゆ知らず、ハリーの忠犬振りは加速していく。
ある夜、会社の帰り。
自宅に近づくとハリーが走って寄ってきた。首輪が無い。