ハリーの憂鬱
「どうされます?」
「勿論、里親になります」
「今夜は、淋しがって泣くかもしれませんよ。大丈夫ですか?」
「はい。私と、娘でお世話をしますから、大丈夫です」
「そうですか・・・じゃあ、何かあったら何時でも電話をしてください」
「はい。ありがとうございます」
僕は腰を屈めると、ハイジの背中を摩った。
「ハイジ・・・頑張れよ」
ハイジは上体を起して僕の鼻先を舐めた。
「頑張れよ・・・」
僕は何度も頭を下げると車に乗り込んだ。
ハイジがシッポを振りながらついて行く。その姿をじっと見守っていた。
親子とハイジは、団地の中に姿を消した。
一瞬、ハイジが振り向いたが、リードが引かれ姿が消えた。
「ハイジ・・・頑張れよ」
翌日の朝十時、僕の携帯に、おばあちゃんから電話が入った。
「あの・・・申し訳ないですが・・・引き取って貰えませんか・・・」
「どうしましたか?」
「もう・・・手に負えなくて・・・引き出しから、箪笥から・・・家の中が酷くって・・・手に負えないです。引き取ってください」
「二〜三日、頑張れませんか?」
「すみません・・・もう、私が狂いそうで・・・引き取ってください」
「・・・・・・判りました。今から直ぐに行きます。十分で着きますから、表で待っていて下さい。直ぐに行きます」