ハリーの憂鬱
「すみません・・・昨日の今日で申し訳ないですが・・・」
「あ、気にしないで下さい。相性が在りますから、仕方がないですよ。今、無理しても・・・ですね。今から出ます」
「すみませんねぇ。お願いします〜」
僕は車のキーを握り締めると、会社を出た。
団地には直ぐに着いた。団地の前では、既に三人がハイジを連れて待っていた。僕は車を道路脇に停めると走り寄った。十歳の女の子が泣きべそをかいている。それを母親が慰めていた。
「こんにちは」
「梅雨川さん・・・本当にすみません」
「駄目でしたか」
お婆ちゃんが念を押すように話し出した。
「大人しいと思っていたら、もう、何でも引っ張り出すし、倒すし、家の中が散々ですよ」
「自分では引き出しは開けられないはずですけど」
「ま・・まぁ・・空けていた私達も悪いんですけどね・・・まさか、こんなに酷いなんて思わなかったから・・・もう気が狂いそうでした」
「そうですか、じゃあ・・・無理ですね。引き取って帰ります」
女の子が泣きじゃくっている。
ハイジを抱き上げて助手席に乗せると、何度も頭を下げて車に乗り込んだ。バックミラーには、娘を慰める母親の姿が映っていた。
僕は自分の罪を痛感した。