ハリーの憂鬱
幸先良く、ラブの里親が決まった事もあり、次は何時かなと心待ちにしていたが、問い合わせが、なかなか来ない。いや、一件だけ在ったが、その話は後回しにする。
ずるずると、一月が経った。
やはり、待ちの体制では難しい。僕は、ハイジとハリーのプロファイルを作成し何時も持ち歩くようにした。
ある日、入居者の自宅に訪問することになった。(僕は住宅メーカーで働いている)そこには、チズ(♀)という、黒いラブラドールがいる。愛犬家で知られる入居者だ。I様としておく。
僕はI様のご自宅に赴いた。早速、チズがシッポをバタバタ振って出迎えてくれた。用件が済む頃、コーヒーと手作りのクッキーが用意された。
僕がコーヒーを啜りながらチズを撫でていると、I様が僕に聞いてきた。
「はじめさんのブログはいつも楽しいですね」
「恐縮です」
「文章も素敵だし・・・作家さんになれるんじゃないの?」
「まさか・・・拙い文章ですよ」
「主人と話していたんですよ〜凄い文才だって・・・小説とかお書きになればいいのに・・・エッセイとかだったら、いいんじゃないかしら」
「小説・・・ハハハ・・・まさか。そんなの無理ですよ。ブログで手一杯です」
(実は・・・この五年前には「小説・ヤス」を書いていた。勿論、未発表だが。)
「そうかしら〜・・・あ、そうそう・・・・あの子達は里親決まりましたか?」
僕は敏感に反応した。