ハリーの憂鬱
吠える事はしない。ただ、悲痛な心の叫びが、僕の心に、染みのように広がっていった。
「大丈夫だ・・・心配しなくても、大丈夫だよ。僕は味方だ。ハリー・・・ハリー・・・安心しろ・・・もう、大丈夫だから。僕を信用しろ」
ハリーの動きが止まった。だが、目は見開いたまま、筋肉が極度に緊張している。
未だだ・・・。
「ハリー・・・何もしないよ・・・何もしない・・・大丈夫だ・・・安心しろ」
ハリーの緊張が少しだけ和らいだ。
僕は精一杯の愛を手のひらに注ぎ込んで、ハリーの背中を優しく撫でた。
かなり汚れている。ダニも沢山、憑いているようだった。
「ハリー・・・まだ解らないよな・・・お前はハリーだ・・・今日からハリーと言う名前だぞ・・・ハリー、辛かったな・・・でも、安心しろ。・・・首輪も換えてやるからな。もう大丈夫だ。僕がついてる・・・大丈夫だ・・・大丈夫」