ハリーの憂鬱
三つの皿を、落とさないように注意深く抱きかかえると、昨日と同じように、自慢の長い足で、チビ達を牽制しながら外に出た。
僕はゆっくりと三匹に近づき、少し手前に三つの皿を並べた。
直ぐには食いつかない。だが、僕が一歩退いた途端、三匹は掘削機と化した。
特にハリーは凄まじい勢いで食べている。いや、食べているというより、飲み込んでいると言った方が的確かもしれない。それもそうだ、久しぶりのご馳走なのだから・・・追加注文が入りそうだ。
僕は、一旦、家に入ると、水とドライフードを抱いて再び外に出た。
三匹は無心で食べている。
ハリーが僕の方を一瞥したが、それは瞬間だった。てんこ盛りのドッグフードが凄まじいスピードで無くなっていく。僕は頃合を見計らって追加のドライフードを提供した。
三匹はそれも食べ終わると、満足したらしく、僕を見上げてシッポを振った。
ハリーも振った。「げんきんなヤツ・・・」と思いながらも、嬉しくて、少しばかり胸が熱くなった。
だが、感傷に浸っている場合ではない。やるべき事をやる。
僕は、ズボンのポケットに三本のリードを隠し持っていた。静かに近づくとハリーに触れてみる。
ハリーの心に葛藤が起きているのが判った。シッポの振り具合がぎこちない。
僕は、リードをポケットから引き出すと、ハリーの青い首輪に繋いだ。
突然、ハリーが暴れた。
僕は、暴れるハリーを引き寄せて抱きしめた。
咬まれそうになりながらも、抱きしめる腕に力を込めた。
抱きしめながら、ハリーの心が読めた。
ハリーが今日まで歩いてきた時間・・・それは辛い、辛い時間だったろう。
人を信用できない。仲間しか信じない。ハリーの心の傷は深かった。