ドッグダム(DOGDOM)
ウイングを下ろすと我先にハイナ達が遁走していく。プリンス・ルイスは逃げていくハイナ達を唯、黙って騎上から見下ろしていた。
「ルイス王子・・・手緩くはありませんか?」
「トラジー・・・敵は奴らではない。敵はティガ・・・・・・危ない!」
プリンス・ルイスはトラジーの体を引いた。トラジーの頭を黒い鉤爪が掠めた。トラジーは馬から落ちた。堕ちて、見上げた時、自分の状況が把握できた。
「うあっ!・・・・こ、こいつがティガ・・・」
身長は五メートル。巨木のような腕に、巨岩のような太もも。手にも足にも黒光りする、鋭い鉤状の爪。巨大な頭と強靭そうな顎。黄色く輝く大きな眼と、引き攣った猫のような表情。太くて長いシッポが背後でのた打ち回っている。
「トラジー・・こいつは俺が相手する・・・・南の門まで走って、応援を呼んできてくれ」
「は、はいっ!」
再びトラジーを黒い鉤爪が襲った。
「逃げろ!早く逃げるんだ!」
ブンッ!という風切音と共に、トラジー目がけて、ティガの丸太のような腕が振り下ろされた。トラジーは間一髪でその攻撃を交わすと、必死で走った。
「ティガ!俺が相手だ」
作品名:ドッグダム(DOGDOM) 作家名:つゆかわはじめ



