ドッグダム(DOGDOM)
「シンガーにしとくのは勿体無いな・・・」
「歌うって・・・楽しいですよ。生き延びたら、僕の歌を聞いてください」
「ハハ・・・是非、聞かせてもらおう」
その頃、西の外れを、長い毛を靡かせながら疾走する影があった。
隠密のトランスポーター、ハチベェ。小麦色の弾丸も夜は黒い影となり、その俊足と相俟って、殆ど識別できない。背中に荷物を積んでいた。靡いていた長い毛の荷物は、ヨークシャー・テリア。小柄ながらも、その風貌に気高さが伺える。
「久しぶりだな、ハチ」
「随分と捜しましたぞ・・・ハチではなく・・・ベェ・・・と続けてください」
「何故だ?俺は昔から、お前の事はハチと呼んでいたぞ」
「色々とあるのです。アラン王子」
「そうか・・・色々とな・・・ハチベェ、俺はもう王子ではない。俺はフリーマン・アランだ」
「私には、何時まで経ってもアラン王子でございます」
「じゃあ、ハチベェはいつまで経ってもハチではないか」
「世捨て人は世間知らずですね」
「悪かったな・・・だが、よく見つけたな。上手く身を隠していたつもりだったがな・・・この美しいロングヘアーが目立ちすぎたか。ハハハ・・」
「王子・・・今は冗談に付き合っておれません」
「分かっておる。賢王ミウ様が殺され、王国はティガとハイナ共に乗っ取られた。それで、マスター・サンが俺を捜させたのだろう。一度は国を捨てたが、精一杯暴れてみせるさ。この覇王の剣でな・・・。」
「頼もしいお言葉・・・・王子・・・間も無く着きます。急ブレーキにご注意を・・・」
「料金はマスター・サンにつけておけ」
「かしこまりました。夜間割り増しでございます」
「おう・・・ナンボでも請求しろ」
作品名:ドッグダム(DOGDOM) 作家名:つゆかわはじめ



