ドッグダム(DOGDOM)
第八章 アラン王子
ドッグダムに夜がやってきた。三日月が東の空に昇っている。雲がゆっくりと流れ、時々、月を覆う。
建物の影から影へと、吸い込まれるように走り去る、二つの影があった。
マスター・サンとマイク。二匹はハイナの警備の目を盗む様にドッグダム広場へ向かった。
ハイナは鋭い嗅覚を持っている。緩やかな風が南から吹いている。二匹は北側から広場へ近づいていった。時々、前方をハイナが横切る。腰に剣を帯びていた。
「にわか兵士だな・・・戦うには容易いが騒がれたら面倒だ。マイク・・・慎重にいくぞ」
「はい・・・マスター・サン」
二匹は再び影を目指して走った。
広場が見えてきた。ハイナは広場を改造して巨大な檻を作り上げていた。その中に逃げ遅れた犬達が閉じ込められているのが見えた。皆、一様に憔悴しきっている。
「良かった・・・まだ、生かされているぞ・・・何とか助け出さねば」
「早く行って、檻の鍵を壊しましょう」
「うむ・・・もう少し待とう。もう少しで月がヘヴゥン・ピークスに隠れる。それまで待つ。それに・・・」
「それに・・・?」
「助っ人が来るかも知れぬ・・・」
「助っ人?・・・どなたですか?」
「来たら分かる・・・来ないかも知れん・・・来ても来なくても、暗闇がやってきたら行動開始だ。覚悟はいいな、マイク」
「はい。マスター・サン・・・覚悟は出来ています」
作品名:ドッグダム(DOGDOM) 作家名:つゆかわはじめ



