ドッグダム(DOGDOM)
「タカコおばさん・・・いつからトラジーおじさんをトラちゃんと呼ぶようになったの?」
「えっ!?・・・うそっ・・・そんな事言ったっけ?・・・ハハ・・・いやだ、恥ずかしい」
「さては・・・・クッ、クッ・・・昨夜、良い事あったな〜?」」
「ダメ、ダメ・・・モモコちゃん、大人をカラカッチャだめ・・・恥ずかしい・・・トラちゃん、助けて」
「トラジー叔父さんまで顔を赤くして・・・図星だね〜」
「あ・・うん・・・昨日、タカコにプロポーズした。でも、まさか賢王ミウ様が亡くなられるなんて。お祝いしている場合じゃないな・・・」
「うっそぉ〜〜・・・お・め・で・と・う」
モモコは最後の「五文字」は声に出さずに口パクで告げた。他の者も同様だ。現実と、周囲の犬だかりを見れば「おめでとう」という言葉は死んでも口に出せない。
棺とカボチャの馬車が広場を通過していった。すすり泣く声、号泣する犬達。深い悲しみと大きな不安。賢王ミウを見送る全ての犬の心に去来するものは同じだった。
教会で賢王ミウをヘヴゥンへ送り出す儀式、「送儀」が始まった。
教会の中に入れるのは王室の犬だけだ。民達は微かに響く悲しげなパイプオルガンの音色に聞き耳を立てた。
ハナビ神父が一段高いところから、お別れの言葉を述べた。
「へヴゥン・・・へヴゥン・・・へヴゥン・・・遥かな宇宙から・・・へヴゥン・・・へヴゥン・・・へヴゥン・・・虹を越えてやってきた、偉大なる大覇王ゼウ様・・・偉大なる賢王ミウ様を、あなたにお返ししなければなりません。賢王ミウ様は、我々を、このドッグダムの全ての生き物を、そして、木々や、草花までに愛を注いでくださいました。偉大なる・・・大覇王・・・・・・」
作品名:ドッグダム(DOGDOM) 作家名:つゆかわはじめ