ドッグダム(DOGDOM)
「はい」
「いいですか・・・落ち着いて・・・愛を忘れずに」
「はい・・・神父様」
「オー・マイ・ドッグ・・・ああ、神よ・・・・神よ」
この神父が一番落ち着いていない。
ドッグダム広場から棺が運び出された。正装したソルジャー達が白馬に跨って先陣を切る。そして、賢王ミウが入った棺がゆっくりと曳かれて行った。
カボチャを模った金色の馬車が一際目につく。亡き賢王ミウの妻、レナ。その横にはマスター・サンが眼光鋭く辺りを見渡している。
マスター・サンは賢王ミウから「レナを守ってくれ」と頼まれた。サンはその時から自分命は無かったものと心に決めた。何があろうとレナを守る。亡き賢王ミウから譲り受けた「賢者の剣」に誓って・・・・。
カボチャの馬車に揺られながら在りし日の賢王ミウを想った。とても厳しい犬だった。剣術の全てを伝授してくれた。厳しかったのは自分を愛してくれていたからだと信じている。その証拠に、普段は良き相談相手であり、頼もしい父のような存在だった。涙が零れて、腕に抱いている「賢者の剣」の柄に落ちた。すると、剣は命を得たかのように青く輝き出した。
「マスター・サン・・・・剣が・・・あなたの賢者の剣が・・・」
「おおっ・・・賢王ミウ様・・・・私に力をお与え下さい・・・」
輝きは一層強くなり、そして夢が醒めるように消えた。
「その剣が輝くのを見たのは初めてです」
「王妃レナ様・・・今、私は賢王ミウ様から、力を頂いたような気がします。何があってもお守りします。ご安心下さい」
作品名:ドッグダム(DOGDOM) 作家名:つゆかわはじめ