ドッグダム(DOGDOM)
場内が「う〜〜」とも「お〜〜」とも聞き取れない声でどよめいた。
「レディ・・・ハナ。もし、僕の期待を裏切ったら・・・今夜は付き合ってもらうからね〜覚悟はいいかい?」
「ふふっ・・・覚悟するのは・・・そっちよ、坊や」
場内から笑いが起きる。犬を呑んでしまった。
観衆は期待でミルクを飲む犬もいない。生唾を飲み込んだ。
「バンドの犬達〜最初はスローでお願いねぇ〜・・・あとは・・・・私について来てぇ〜〜」
ハナは天井を見上げた。精神を集中しているのだろう。彼女の立ち振る舞いが偽物なら笑いものだ。今日にでもこの街から逃げ出す事になるだろう。ハナが小さく動いた。ヒールで床を軽く突いてリズムを取った。
「カッ・・・カッ・・・カッ・・・カッ・・・ワン・・・ワン・・・ワン・・・ワン」
スロー・ビートで演奏が始まった。突然・・・ハナは床に転がった。
みんな呆気に取られている。演奏が続く。ハナは、まだ踵でリズムを取っていた。
手を胸の上で折り曲げ、シッポを伸ばしている。仰向けで眠ったかのようだ。体がうねりだした。
クネ・・・・クネ・・・・クネ・・・・クネ。
観衆は、そのクネクネの悩ましさに大きな溜息を漏らした。
作品名:ドッグダム(DOGDOM) 作家名:つゆかわはじめ



