ドッグダム(DOGDOM)
「頼むわねぇ〜〜」
ハナはスーツケースから花柄のポーチを取り出すと、小脇に抱えてスポットライトが煌くホールに入っていった。腰をクネらしながら歩くその姿に、テーブル席でミルクを煽っていた男達の目が釘付けになった。
「ヒュ〜・・・・マブイ柴犬だね・・・締まった足首。丸まった尻尾。それにあの腰つき・・・たまんないぜ。見かけない子だな・・」
「連れはいないようだぜ・・・・だったら、後で声をかけようぜ」
「どっちに優先権があるか、じゃんけんだ」
「バカ・・・グーしか出せないんじゃ、勝負にならねぇ」
「・・だな。ハッ、ハッ、ハッ・・・お〜い!ミルクのオンザロック!ダブルで!」
「は〜い・・・ただ今〜」
「おっ?・・・・あのウェイトレスも可愛いじゃん・・・」
「うん・・・なかなかのテリアだな」
「あの奥のテーブルはどうだ?」
「どれどれ・・・・・・・・・・・・・・・あれは・・・だめだ」
「そうか?・・・・小さくて、結構、可愛くない?」
「バカ・・・あれは占い師チャコ様だよ。俺たちの手に負える玉じゃない」
「おお〜〜〜あれが占い師チャコ様か・・・占い師って言うから怪しい中年のオバサン犬かとおもったら・・・・可愛いねぇ〜」
「だから・・・・止めとけって。火傷するぞ」
「火傷は嫌だな・・・・おっ・・・・そろそろショウの始まりだぜ」
スポットライトに照らされ、ダンディなスーツ姿のポインターがステージに現れた。割れんばかりの拍手と嬌声が沸き起こる。お約束・・・なのだろう。
「紳士、淑女の皆さん。ドギー・バーへようこそ!・・・今宵もハートフルでソウルフルなファンタスティックナイトをお約束するよ〜それに、今夜はダンスコンテストだぁ〜みんな、心の準備は良いかな?」
作品名:ドッグダム(DOGDOM) 作家名:つゆかわはじめ