ドッグダム(DOGDOM)
マイクは、占い師チャコの言葉に少しだけ嬉しくなった。得意の笑顔を作って振り返った。占い師チャコは鼻を上に向け、大口を開けてリンゴに齧りついていた。
表の告知板にポスターが貼られた。
「本日、ダンスコンテスト開催。優勝者にはボーン三〇本!」
仕事を終えて、着飾った犬達が次々とドギーバーに集まってくる。犬種は様々だ。ここは自由の国ドッグダム。犬種の坩堝(るつぼ)だ。別名をビッグ・アップルとも呼ばれていた。後の世で、同じ愛称を持つ街が、ヒト社会で生まれている。
ドギーバーの看板を潜ると、そこはクロークになっている。クロークはごった返していた。
ピンクのスーツケースを下げた、見かけぬメスの柴がいる。流れ者ダンサーのハナだった。
「ごめんなさいね〜スーツケース預かってもらえないかしらぁ〜」
「畏まりました。帰りにこのタグを出してください。お荷物と交換いたします」
「ありがとう〜・・・あ、待ってぇ〜。ポーチだけ持っていくわねぇ〜あ、これ、チップよぉ〜取っといてぇ〜」
クロークの受付け嬢、パグが丸い目を更に丸くした。スーツケースの中身はすべて新鮮な青ピーマンだったのだ。
「あら・・・驚いたぁ〜?あたし、これが無いと生きていけないのよ〜。大事に仕舞っといてねぇ〜〜一つくらいは食べてもいいからさぁ〜」
「あ、結構です。シッカリ保管しておきますから」
作品名:ドッグダム(DOGDOM) 作家名:つゆかわはじめ