ドッグダム(DOGDOM)
楽屋では、ワイエス・フラワーリング・ジェイピー・アイリスとア・ペコ・オブ・ジェイピーが今夜着る衣装を選んでいる。どれも派手なものばかりだが、その中でも胸元が大きく開いたピンクのスパンコールを選んだ。照明でキラキラと煌くはずだ。腰の部分が大きく割れていて、尻尾が強調される。男達が熱狂するに違いない。
ドレスアップを終えたマイクは、愛用のギターを取りに奥の部屋へと向かった。占い師チャコのテントに灯りが灯っている。
精神的に集中したいマイクは、敢えて無視するかのように目線を外して通り過ぎた。楽器庫からサックスを抱いたアイリッシュ・セターが出てきた。軽く挨拶を交わす。
マイクはギターの入ったハードケースを持ち上げると振り向いた。
占い師チャコが、青い顔をして立ち竦んでいた。リンゴを抱いている。
「うあああっ!・・・」
「くるぞよ、くるぞよ〜〜恐ろしい悪魔がやってくるぞよぉ〜〜」
「お、脅かすなよ・・・なんで、いつもそういう現われ方しかしないんだ!普通にしろ、普通に!」
「普通?・・・普通では占い師のオーラが出ないぞよ〜〜」
「それに、普通にしゃべれないのか?・・・それも、普通だとオーラが出ないのか?」
「それより・・・地獄が来ておるぞよ〜〜恐ろしや〜ああ、はじめっち〜何でこんな事をやらせる〜〜ああ、恐ろしや〜」
「勝手に言ってろ・・・・」
マイクはチャコの術中に嵌るのを恐れてホールへ急いだ。背中からチャコが声をかけた。
「マイク・・・ステージ、頑張ってね・・・後ろの席で見ているわ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・うん。ありがとう」
作品名:ドッグダム(DOGDOM) 作家名:つゆかわはじめ