ドッグダム(DOGDOM)
「タッ、タッ、タッ、タッ、タッ、タッ、タッ、タッ、タッ、タッ・・・・・・・・・・・」
まるで小麦色の弾丸だ。弾丸は通行犬を巧みに避けながら、通りを一気に駆け抜けると、ドッグダム城の方へと消えていった。
「な・・・なんだ〜今の!?」
「タッ、タッ、タッ、タッ、タッ、タッ、タッ、タッ、タッ、タッ・・・・・・・・・・・」
ハチベェ。
隠密のトランスポーター。普段は白いタオルを頭に巻いて農夫をしている。
彼が走る時。それは、ドッグダムの異常事態を意味する。
「タッ、タッ、タッ、タッ、タッ、タッ、タッ、タッ、タッ、タッ・・・・・・・・・・・」
ドッグダム城は丘の上にある難攻不落の城。周囲にぐるりと濠が巡らされ、城内に入るには北と南の跳ね橋を渡るしかない。その跳ね橋をそれぞれ北ウィング、南ウィングと呼んでいる。南ウィングは城下町へと通じ、その先はヘヴゥン・ピークスへと繋がる。一方、北ウィングは荒涼とした未開の地。その先には黒い森があり普段は誰も近づかない。
曲がりくねった上り坂を弾丸が走る。衛兵のドーベルマンが慌てて南ウィングを下ろしていた。
「タッ、タッ、タッ、タッ、タッ、タッ、タッ、タッ、タッ、タッ・・・・・・・・・・・」
ハチベェの首には皮の薬袋が結ばれていた。風圧から目を守るためか、瞼を閉じているようにも見える。
ハチベェは、ヘヴゥン・ピークスから走ってきた。普通の犬なら丸一日かかる距離だ。それを半日で疾走してきたのだ。
作品名:ドッグダム(DOGDOM) 作家名:つゆかわはじめ