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妻のうしろ

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「お料理なんて箸で摘むときだけ確認するだけでしょ。後の視線はあちら」
「さて、今日のおかずは何だったでしょう?」
「箸でかき込まないで。見て食べてよ」
そんな台詞を何度聞いたことか。
「美味しいから急いで食べるんだ」
理屈にもなっていないことを言ってその馴染んだ味を口にした。

目の前の惣菜は美味しかったが妻の程ではなかった。
「これはどこの?」
「美容院の近くのおかず屋さん。あの秤売りのところの……」
きっとその店でも私の好むものを選んできたに違いない。
妻自身が食べたくて選んだものは、三色フライの串ぐらいだろう。
いつもそうだ。本人は小食とはいえ、おかずの大半は私の好みだ。
「好きなもの買っていいんだよ」
「ちゃんと買ったわよ」
「君の食べる分くらいしれてるんだから、ヒレのステーキ買ったって」
「大丈夫。しっかり好きなもの買わせて貰ってるから」
「服でも遠慮しずに買えよ。その為に俺は頑張っているんだから」
「はい。身体に気をつけてね」
「子ども達も手が離れたんだから自分の時間を作ればいいんだよ」
「ありがと。宜しくね」
(そうだよ。君を守るのは俺だけなんだ)
私は、テレビを消して妻との食事を楽しんだ。
作品名:妻のうしろ 作家名:甜茶