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妻のうしろ

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だが、ある日を境に妻の様子が変わった気がした。
美容院に行った頃には、友人と食事に行くと言うようになった。
きっと、気持ちが晴れやかなのだろうと思っていたが、そんなにも友人と
出かけるものなのか?
それに、友人って誰だ?
子どもを介してのお母さんでもない。
学生時代の部活仲間でもなさそうだ。
趣味で始めたカルチャーセンタで知り合った人なのだろうか。
週に二、三日気まぐれに始めた仕事のつきあいか。
急にそんなに親しくなる友人を作れるものなのだろうか。

「夕飯までには帰りますから」
その言葉を破ったことはない。普段の家事も私の相手も変わってはいない。
だけど、何かが不安にさせる。

帰って来たときの笑顔なのか。
さりげなく避ける仕草なのか。

妻の後ろに何があるのだろうか……。

「俺のこと愛しているよね」
「はい」
「ちゃんと言ってよ」
「えー何言ってるの。もうー……愛してます」
後ろを向いた妻の背中を見つめながら、妻の向き合っているものを考えずには
いられない。

妻の正面にいるのは誰なのかと……。


     ― 了 ―
作品名:妻のうしろ 作家名:甜茶