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妻のうしろ

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昼を過ぎた頃、妻が帰って来た。
美容院の香りを纏った妻は、出かけたときと別人なほどに微笑んでいた。
私は、抱きしめたくなる衝動を抑えて決めの褒め言葉を口にしようと思った。
「良くなったね」
自分自身の口を疑うような稚拙な台詞にもう一度思考を整頓した。
「若くなったじゃないか」
半分笑いながら妻は私に目を向けた。
「そう。ありがとう。それ褒めてるのよね?」
妻を褒めることに失敗した私は、言葉を拾い集めたように言い始めた。
「あ、そうじゃなくて、何年経っても俺は君が好きなんだなー。普通はあきるでしょう。なかなかそんなこと言うことないと思うけど、俺は言えるって凄くない?」
「んっ!」
妻は詰まったような笑いとその何とも表現できない顔つきで私を見ていた。
「何も言わない方が嬉しかったかもしれない……」
「そっかぁ?」
「帰りにお惣菜買ってきたから食べましょ。おなか空いたでしょ」

いつからだろう。妻が母親よりも慕い頼る大きな存在になったのは。

食卓では、向かい合わせではなく、縦、横の位置で席についていた。
この席は、子ども達が居る時から変わっていないのだ。
妻の向かいは息子だった。私はいつも妻の横顔を見ながら食事をしていた。
いや本当は、この席はテレビが見やすいのだ。
作品名:妻のうしろ 作家名:甜茶