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妻のうしろ

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ふと壁に掛けられた時計を見た。
(ん?少しずれていかな)
日頃、そんなところなど気にもならない。床に転がったペンですら気にしたことがあっただろうか。だが何となく落ち着かなさを感じ、立ち上がり時計に手を掛けた。
「こういうところにへそくりがあるんだよな、ってまさかね」
私は、その歪みを直しながら独り言を言ってみた。
一枚のレシートくらいの紙がひらひらと左右に揺れながら床に落ちた。
変な期待と不安で拾い上げた。
(やめてくれよ。俺、ホテルのレシートなんて隠してなかったよな)
拾って、思わず声が噴出し笑った。
『祝 結婚記念』
そう書かれた糊の効かなくなったシールだった。
時計のずれた壁は本来の色をしていた。綺麗だと見ていた壁も色を変えるほど月日が過ぎたのだなと改めて感じた。
たぶん掃除のときにでも触れたのだろう。時計をその枠に沿うように直した。

こうしてみると、いつも妻が居る時は、妻の背丈くらいまでしか見ていなかったように思った。別に妻に見惚れてばかりいたわけではないが、周りを見る必要がなかった気がした。
「はて?結婚して何年だっけな?」
つい妻には聞かせられないような台詞を呟いた。
情けないかな、小さい子が指を使って数えるように両手の指を折り数えてしまった。
指を折り、全て広げて、また折って……。そして、ひとつ溜め息。
(長かったのかな……)
作品名:妻のうしろ 作家名:甜茶