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郷田三郎(G3)
郷田三郎(G3)
novelistID. 29622
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メディカル・ヒストリー・ツアー

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 手に汗を握り締めながら、いち子は注意深く周りを見回した。
『あった!』
 二組の西洋甲冑。手前の方のソレはまだその手に剣を握っていた。
 いち子と、その視線の先に気付いた美津枝が同時に走り出す――。
 だが、美津枝は剣が重いのか甲冑にたどり着いたのはほんの数歩だけいち子の方が早かった。
 甲冑から重たい剣を奪うと、いち子はそのまま力任せに振るった。
 威嚇の積りであった。だが、重たい剣が波打つ様な軌跡を描くと、美津枝の腹部が誘われるようにそこへ被さって来たのである。
 見よ、装飾品であるはずの剣は深深と美津枝の腹に刺さり、美津枝の剣は僅かにいち子の二の腕を切りつけただけだった。
 そのまま自分に凭れ掛かる美津枝を感じた時、いち子は始めて我に返った。
「美津枝さん! 大丈夫? しっかりして。死んではダメよ、お願い。死なないで」
 目を閉じそうになる美津枝にいち子は何度も声をかけた。
「ごめんなさい、こんなことに成るなんて……」
 いち子の目に涙があふれた。
「あたしそんなに貴方の事をキライな訳じゃないのよ。ええ、私だって悪いところは幾らでもあるもの」
「目を閉じてはダメ、戻ってきて、お願い。うう……」いち子の目に涙が溢れ、そしてこぼれた。

「そお? じゃ、戻りましょうか?」
 腕の中の美津枝が野太い声を発した。いち子が驚いてその顔を見ると、なんと顔だけがあの支配人に代わっていた。驚いて手を離すと支配人の頭は大理石の床に落ちて鈍い音をたてた。