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郷田三郎(G3)
郷田三郎(G3)
novelistID. 29622
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メディカル・ヒストリー・ツアー

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 顔だけが支配人の美津枝、いや、身体が美津枝の支配人か? が立ち上がると、剣はスゥっと消え、支配人は自分の身体を取り戻していた。
「いえ、あまりにエキサイトなさいますお客様の場合、最後にこういう演出も必要な訳でして……。ええ、ちゃんと戻りきらないで外に出られますととても危険なんです。今の様な事が現実で起こったりしますので。ですから、最後に程良い緊張感、自戒の念、人間愛などを強調させて頂きまして締めさせて頂く訳でございます。如何でしたか? 緊張が解けてほっとなさったでしょ?」
 もみ手をする支配人の身体は現実世界のソレよりも若干小さく見えた。
「では、MHT社は貴方様の又のお越しを心よりお待ち申し上げております」
 再び目の前が暗くなり、そして視界が開けると、カプセルのハッチが開いており、明るい部屋の照明が少し眩しく感じられた。
 どうやら、正真正銘の元の部屋に戻っていた。
 もともとこの部屋には、甲冑の飾り物など無く、トリックアートで立体に見せている装飾品しかないのであった。
 いち子は近くに居る係員に近づくと、小さな声で訊ねた。
「これって皆同じような体験をするんですの?」
「いいえ、奥様。ひとり一人皆違う違う世界を持つように設計されております。ええ、勿論シンクロさせる事も出来ますし、カップルでご旅行されるお客様も多いんですよ」
 係員の青年がにこやかに答える。
「そう」いち子はそれ以上何も言わず、出口に向かう友達を小走りで追いかけていった。
 五人の仲間たちは、本当に店を出ると、やれ王子様と乗馬をしただの、大金持ちの独身貴族に求愛されたのと勝手な事を言いながら和気藹々と帰って行った。
 いち子と美津枝のお喋りがいつに無く弾んでいる。
 勿論五人とも、それはそれは爽やかな笑顔を浮かべての事であった……。


          おわり