メディカル・ヒストリー・ツアー
「ああ、ホントだ、これはちょっと危ないネェ」
プライバシーの為にアニメチックに加工された画像を見ながら、もう一人のオペレータが装置を調節した。
いち子は押し寄せる暴力の快楽に身をまかせて、美津子にパンチを浴びせ続けた――。
「ハイ、その辺でどうでしょう? もうお気は済んだのでは?」どこからともなく例の支配人の声が聞こえてくる。
何度か声を掛けられて、ようやくいち子は自分を取り戻した。
いち子は動かなくなった美津枝から離れると玄関のドアを開き家の中に入って行った。
背中で美津枝の悔し泣きの声を聞きながら……。
ドアを閉じて振り返るとあのカプセル型のマシンが置いてあった。
マシンの席に座ると、いち子の目の前がすぅっと暗くなって行く。
すっきりと目を開けてカプセルを出た。
友人達にはとても語れないが、なんとも言えない爽快感・充足感がいち子の体中を駆け巡っていた。
ふと見ると、人気の無い部屋の真中に装飾品の西洋の剣をもった美津枝が氷のような表情をして立っていた。
いち子を見定めると美津枝はゆっくりといち子に近づいて来る。その目には憤怒の炎が見た目にも燃え盛っているのが解かった。
さすがにその顔には傷どころか、殴られた形跡さえも無い。
まさか!?
『あたし達二人のトリップがシンクロしていたとでも言うの?! あたしにボロボロにやられた腹いせに……』
作品名:メディカル・ヒストリー・ツアー 作家名:郷田三郎(G3)