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郷田三郎(G3)
郷田三郎(G3)
novelistID. 29622
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メディカル・ヒストリー・ツアー

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 決まった! と思ったが美津枝もなかなかの遣い手らしく、左足を軸にふわりと身体を回転させると、きれいに弧を描いた裏拳がいち子の顔面にヒットした。
 が、倒れないいち子に今度は猛然と美津枝が仕掛けた。
 パワーよりもスピードに自信があるのか、美津枝は左右の正拳突きを嵐のように繰り出した。
 いち子は避けるのが精一杯で中々反撃に出られなかったが、ほんの一瞬、僅かな呼吸の隙をついて中段正拳突きを美津枝のわき腹に抉り込んだ。
 動きが止まった美津枝に右の足刀から左回し蹴り、右後ろ回し蹴りの黄金のコンビネーションを叩き込むと、美津枝は自分の棄てたゴミの上にばったりと倒れこんだ。
 いち子は得意げに人差し指を立て、もう片方の手を腰に当てた。
「いい? 美津枝さん。ゴミはちゃんと決められたルールに従って出すのよ? それから、新聞屋さんは四時頃には配達を始めてるわ。いいかげんな事は言わないで頂戴!」
 そして、クルリと振り返り、立ち去ろうとした美津枝の背中で、ガラスビンの割れるイヤな音がした。お決まりのコースである!
 いち子が振り向くと、鼻血を垂らした美津枝が両手に割れた赤ワインのビンを持ってユラリと立ち上がるところであった……。
 割れたビンから僅かに滴る赤い液体はこれから起こるであろう惨劇を予見している様である。
 襲い掛かる美津枝に悲しげな表情を向けいち子は一際甲高い声を上げて跳んだ。
「あああ~おあぁ~~~~~~~~っ!!」
 両足で一辺に二つのビンを蹴り飛ばし、そのまま空中で三回も蹴りをお見舞いした。
 着地と同時に美津枝に馬乗りになると、顔面に――。

「お、おい、このAポッドのヒトちょっと暴走気味じゃないか?」
 オペレータ室で沢山のモニタを前にしたオペレータが声を上げた。