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郷田三郎(G3)
郷田三郎(G3)
novelistID. 29622
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メディカル・ヒストリー・ツアー

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 コーヒーやジュース、カクテル等それぞれの好みに応じて、無味無臭の薬品を混ぜたドリンクが供されるのだ。
 いち子と双葉仁美はコーヒータイプを。
 いち子と同い年の三上美津枝はオレンジジュース。
 一番若い菱谷佐代子と一番年配の五嶋逸枝はいつものようにビールを頼んだ。
 じきにクスリが効いてきたのか皆トロンとした目になる。
 係りの者に案内されて、それぞれカプセル型のマシンに入りヘッドギアを着ける。美しいパールカラーの、その卵形をしたカプセルは斜めに切れ込みを入れた様な形状で、撥ね上げられた全面ハッチは客の準備が出来ると静かに閉じて外からの情報を一切遮断した。
 続いて外部オペレーターが予め各人に聞いて作成しておいたカードを機械に挿入すると、ビジター達のトロンとしていた目はしゃっきりし、身体も幾分か軽くなった様な気がした。
 椅子から立ち上がって目の前のドアを開けると、そこには今までいた建物の中とは全く違う景色が拡がっていた。(勿論、目が開いたのも椅子から立ち上がるのもマシンが作り出した錯覚であるが)
 ところが、違う景色と言ってもいち子の目の前に現われたソレはいち子にとっては実に見慣れた景色だったのである。
 そこは夕暮れせまる頃の自分の家の玄関だったのだ。
 あっけに取られて突っ立っていると、どこから現われたのかタヌキの着ぐるみを着た怪しい人物が大きなビニール袋を両手にぶら下げて立っていた。
 タヌキは辺りをキョロキョロと見回すと、いち子の家の前のゴミ捨て場にドサっとビニール袋を置いた。
 どうやらいち子には気付いていないようである……。

 そそくさと立ち去ろうとするタヌキをいち子は大声で呼び止めた。