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郷田三郎(G3)
郷田三郎(G3)
novelistID. 29622
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メディカル・ヒストリー・ツアー

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メディカルヒステリーツアー


Medical Hysteria Tour

 ある晴れた日の昼下がり、MHT(メディカル・ヒストリー・ツアー)社○○町○○共立病院支店に五人の主婦のグループがやって来た。

 MHTとは究極のバーチャル・リアリティー・マシンを使った新しい娯楽サービスである。
 最先端の機械と特殊で安全な薬品を複合的に使いその性能を極限まで高めてあり、それを使って歴史旅行のバーチャル体験を始めとして3Dシアター、テーマパーク、スポーツ体験などあらゆる娯楽を楽しめる“至高の娯楽施設”と言われているものなのだ。
 但し、特殊な薬品を使用するために、必ず病院の管理下での営業が義務付けられていた。企業広告に詠っている“安全”はおそらくこの事に依存しているのだろう――。

「いらっしゃいませ、市原いち子様のグループでいらっしゃいますね?」
 太りすぎの身体を黒いスーツに身を包んだ支配人が精一杯の愛想笑いを浮かべた。
「こんにちは支配人さん、今日はお友達と集まって来たんですのよ。新しいサービスが始まったと聞いて、皆さん楽しみにしてらっしゃるわ」
 皆の代表として予約を入れたいち子がにこやかに応える。
「はい、ストレス解消メンタルクリニックコースでございますね? 当店でも最近一押しのサービスでして、お客様は皆さん、ストレスを解消して爽やかな笑顔でお帰りになられますよ」
 支配人は少々厳しいカイゼル髭をピクピクさせて自慢した。
「さあ、こちらでございます。どうぞお入りください」
 五人の主婦たちは受付を済ませると軽いヘルスチェックを受けてから待合席に座った。
 直ちに例のクスリが入ったドリンクが出される。