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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「夢の中へ」 第三話

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「藤次郎、今夜はわしの家に泊まってゆけ。ゆっくりと湯に浸かって疲れを落とし明日の朝小屋に戻ればいい」

「はい、そうさせて頂きます。まどか!もう少しだぞ。頑張れ」

藤次郎はいつでもまどかには優しかった。この時代の男性にしては気が付くし、物腰も柔らかい。まどかは自分の親や弟、友達と離れてたった一人で訳も解らずに連れてこられた戦国時代での不安や孤独を感じずに暮らせる事が嬉しかった。これからは藤次郎と仲良く
家族を作って暮らす事が幸せになる唯一の方法だと思うようになった。

湯から出て、夕餉を三人で共にして疲れをとるために布団に入っていたまどかだった。
実は駿河への旅立ちの前夜は藤次郎と何もしないで寝てしまったのだ。理由は特になかったが、あるとすれば眠かったのだろう。
そのことを藤次郎は気にしていた。

「まどか・・・今宵は許してくれるのか?」

「えっ?何をですか?」

「何って・・・夫だろう、俺は?」

「何言ってるんですか、当たり前じゃないですか」

「だったら・・・そのう・・・言わせるのか?」

「駿河への前夜寝てしまった事を拒否したと思ったのですか?」

「拒否?・・・」

「嫌ったという事です」

「違うのか?」

「眠かっただけです・・・藤次郎さんも何もしなかったから・・・」

「そうだったのか。安心した。嫌がったらどうしようかとためらっていたら・・・寝息が聞こえたので、そのまま寝てしまったんだよ」

「ゴメンなさい・・・本当は少し怖いの」

「初めてだから仕方ないよ。俺だってそうなんだから」

「うん・・・赤ちゃん出来るといいね。たくさん子供が欲しいなあ」

「子供か、俺がまだ子供なのに大丈夫かなあ?」

「あなたが子供なら私は何?もっと子供みたいなんだから。でも大丈夫よ、かわいい赤ちゃん産んで見せるから」

「まどか!絶対に幸せにするから・・・」

藤次郎はそういうとまどかに抱きついた。初めてのことなので要領が悪かったが何とかまどかと一つになった。
痛みを堪えながらまどかはしっかりと藤次郎の背中に手を回してその時を迎えた。