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アグネシア戦記【一巻-二章】

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「ご存知の癖に…わたしはゲノム国王軍聖騎士団の隊長として隊を率いてウィプル村に行く途中です、ですが日も暮れ仲間もわたしも体力が限界になりました。そこでフレグニール様の泉をお借りし、体の疲れや汚れを落したくて参りました」

フレグニールは知っていたという様に大きな体を震わせながらケタケタ笑う。

『ソノ容姿トイイ言葉遣イトイイ…本当二英雄ニソックリジャノウ、コレハ愉快ジャッ』


フレグニールは満足そうに笑いながら一度祠に供えられた酒を確認して、大きく頷く。

『ヨカロウ、好キナヨウニツカウガヨイ』

それを聞いたフリルは、立ち上がり二人に振り返る。

「それじゃ、いこっか」

フリルは上機嫌で洞窟の更に奥へ向かい、そんなフリルとフレグニールとのやり取りを唖然として見ていたグリフォードとラルフはお互いに顔を見合わせると。
「まっ!待って下さい!」
「おおい!おいていくなよー!」

現実に戻るなり慌て後を追い掛けた。暫く暗い洞窟を進んだ三人は月明かりを受けて青い輝きを放つ美しい泉へと辿り着いた。泉の水は熱を帯びていて温かく、透き通り、そこまで深くないのか底が見える。湯気は立たないが温泉と言われるものに近かった。

「わ〜!、さっ!早くはいりましょ!」

そこで事件が起きた、フリルが泉につくなりはしゃいだような声をあげながら何の恥じらいもなくグリフォードに買わせた服を脱ぎだしたのだ。

「た!隊長!!?」

慌てて後ろを向いたグリフォード、ラルフは隊長の未発達の肉体を見ても興奮はしないのでじっとしていた。

「ラルフ!背を向けなさい!こ!殺されますよ!?」
そこでラルフも危険を察知する。

「やっべ!!」

ラルフは素早く反応して後ろを向いてグリフォードに目を向ける。

「サンキュー」

「どういたしまして…」

ラルフとグリフォードはここで改めて友情を分かち合った。


「ふあ〜、ん?どしたのよ、急に後ろなんて向いて〜」

そうとは知らないフリルは呑気にお湯に浸かり、目を細めると上機嫌になっていた。

「いや、見たら殺されそうなので…」

グリフォードの答えにラルフも激しく頷く。それに対してフリルは首を傾げた。

「なに?照れてるわけ〜…全くウブなんだから〜」

『取り敢えずタオルかなにかで隠してやったらどうじゃ?』

突然フリルの言葉を斬るように洞窟の闇の中からやってきた気品高い声の女性…二人が気配を感じ取った時には既に目の前にいた。豊かすぎるグラマーな体は深紅をあしらった派手な水着で覆われており、それにエメラルドに輝く羽衣を上からかけて覆いかくしている。白銀の髪を揺らしながら黄金の目で二人をジ…と見据えていた。その余りの美しさにグリフォードやラルフは背筋が凍り付くのを覚えた。

「ちちんぷいぷいっと…」
「きゃあっ!」

謎の美女は、ラルフとグリフォードの目の前でおそらくフリルを指差してそんな呪文を呟いた――その瞬間。フリルが普段では決してあげることのない悲鳴、二人が慌てて振り返るとそこには胸元に平仮名で「ふりる」と書かれたスクール水着姿のフリルがいた。

「え!…あっ…あの!?きゃっ!」

「うむうむ!、良く似合っておるのぉ〜♪流石は英雄の子!」

自分に何があったのかを瞬時に察することが出来たフリルでも激しく動揺していた。水着になっていたことよりも、背後に瞬間移動した謎の女がフリルを後ろから抱きしめて頬擦りしながら満面の笑みを浮かべていたからだ。こんな芸当が出来る人間は彼女の知りうる限り恐らくいない。

「フレグニール様?」

フリルは名前を呟いてみれば、フレグニールと呼ばれた女は大きく頷く。

『そうじゃ、物分かりの良い子じゃ〜…ん?しかし英雄の子よ』

フレグニールはフリルを人形のように抱き締めたままフリルの顔を覗き込む。

「な!、なんです…ひゃっ!!」

再びフリルが普段では決して挙げないだろう声が響く。今度はフレグニールが背後からフリルの未発達な胸を揉みしだいていた。

『なんじゃ、こっちは英雄より薄いではないか、淋しいのう…』

「ほ!!ほほっ!ほっといて下さいよう!!」

フリルは顔を真っ赤にしながらフレグニールのホールドから逃げ出そうとするがフレグニールは体格を利用してフリルをガッチリと拘束しておりフリルは身動きが取れない。

『ほほ?なら我がソナタの胸が大きくなるように沢山揉んでやろうではないか〜!』

フレグニールはそう言いながらもそこで置いてきぼりな二人を視界にいれた。

『なんじらも入ってきんさい!ちちんぷいぷい』


二人は逃げる事すら出来ずに水着にされてしまい。自分たちの着ていた服や剣は遥か背後に畳まれて置かれているフリルの服の横に並べられていた。

「いやぁ!!…そこは…ていうか自分で…ひゃうう!?」

『ほう!?ここか?ここがいいのんか〜?』

「ひゃあ!…だ!だめぇ〜!!」

甘いピンク色の声を背中に受けながらラルフとグリフォードは温かい水で体を流す。

「ねえラルフ君?」

「なんだい?グリフォード君?」

余りの刺激の強さに二人の頭は幼児化していた…もし二人がいまここで振り返ったなら、ピンク空間に飛び込んでしまってもう帰っては来れないであろう。そんなこんなで―

『ほっほっほっ!100年ぶりに愉快であったぞ〜?』

フレグニールはそういいながら、泉で体力回復を図ろうとしていたフリルの頭を完全に消耗させて寝かしつけ、今は膝の上に乗せている。フリルは歳相応の愛くるしい寝顔で無防備に口を開けて眠っていた。

『主ら、この娘の隊員…と言っておったな?』

フレグニールはフリルの頭を撫でながら聞いてきた。洞窟内で休む事を認めて貰い、寝る支度をしていたグリフォードとラルフは振り返り頷く。

「はい、隊長…まったく凄い人ですよ…」

グリフォードは大きくため息を吐いて穏やかな寝顔のフリルを見つめる。

『そりゃ当たり前じゃなぁ…ぬしらとは根本から違うからの〜』

フレグニールはそう自慢げに言いながらフリルの頭を撫でながら微笑んだ。

「一つ、聞いてもよろしいでしょうか?」


グリフォードの言葉にフレグニールは顔をしかめる。

『わらわの年齢は秘密じゃよ?』


してやったりとフレグニールは満足気な表情を浮かべるがグリフォードは首を横に振るう。

「彼女は…一体何者なのでしょうか、あなたの言っていた英雄というのも気になります…」

「ああ、それは俺も気になってた」

グリフォードの疑問に既に横になっていたラルフも体を起こしてフレグニールに目を向ける。



「レイブン相手に肉弾戦…そんな事が出来る奴なんてそういねえ…もしかしたら…」

ラルフは思わず出そうになった言葉を飲み込んだ。フリルもあなた『フレグニール』と同じように化けている竜か何かなのか?、とは言えなかった。

『ふふふ』

それを聞いたフレグニールはケタケタと肩を震わせ始めた。

『フハハハハハハ!!案ずるでない。この子はちゃんと人間じゃよ』

フレグニールは聖母のように彼女の頭を優しく撫でながらその豊満な胸を張り自信満々に答え。すぐに真顔に戻るとフリルの寝顔を見つめた。